地方私鉄 路線の考察

ここでは便宜上他社線との接続駅を起点駅として記述していきます。

鉄道の基本は路線です。特に地方鉄道ではこじんまりとした路線が多く、初めて架空鉄道を作る題材としては最適だと思います。地方鉄道路線の多くは国鉄/JRや民鉄などの幹線が通らなかった、鉄道の恩恵を受けられなかった地域が幹線への枝のように伸びた路線が大半を占めます。旅客輸送だけでなく、鉱石や石炭、材木などの輸送を目的とした鉄道もありますが、これらも嵩張るような貨物の輸送を目的として敷設された鉄道の場合、輸送の主は貨物で旅客は従である事がありました。旅客が主の鉄道でも開業当初から昭和の終わり頃まではその地方の農産物や肥料、手荷物などを輸送する小規模な貨物が運行されていました。このためほぼ全て、起点或いは終点や中間駅において国鉄/JRや民鉄の幹線に接続してその鉄道の範囲を超える地域への輸送が図れるようにしています。逆をいえば、かつての下津井電鉄や新潟交通のように他社線との接続が断たれると鉄道線は衰退の道を歩む事になります。叡山電鉄は一時期京都市電廃止により、他路線との接続の無い状態となり利用者の減少に歯止めが掛かりませんでしたが、京阪電鉄の延伸により再び利用客の増加に繋がりました。このように地方私鉄にとって他社線との接続は存続に必須のものとなっています。
鉄道津説の歴史を語る時によく出てくる言葉に鉄道忌避伝説というものがあります。これは鉄道を敷設しようとした時に地元が鉄道の建設に反対したというものです。これには事実であるものやデマでであるものもあって一概には語れませんが、これを利用して鉄道を設定するのは幹線と中心地を結ぶ路線を作るには格好の材料といえるでしょう。
現時点の世界観を盛り込んだ鉄道を設定するとなると、こうした歴史の上に根差したものにすると重厚感が増して本物っぽくなるでしょう。今では旅客専業で運営している鉄道でも、道路網が未発達で宅配便が幅を利かせていなかった頃は、多くの鉄道が貨物列車を運転していたり荷物車や郵便車を設定していて、地方鉄道の主管駅前には日通の営業所が建っていました。

幹線と市街中心地を結ぶ路線の考察
鉄道忌避伝説の代表例といえる街へ鉄道が乗り入れるのは地元が反対した、または幹線が大都市間を最短距離で結ぶルートを選択したため、そのルートから外れた街が幹線に連絡する為に鉄道を敷設したなど様々な理由で本来需要があったであろう街に鉄道が通らず、当時数少ない長距離移動手段であった鉄道を街に誘致すべく敷設した鉄道が存在しました。この場合大都市の近距離であれば現在の大手私鉄がこのような街を串刺しにして直接大都市に乗り入れるパターンがありましたが、地方では街と最寄の幹線への駅へと結ぶ鉄道が敷設されました。この場合起点駅は当然ながら他社線との接続となります。歴史から現在を考えると今は鉄道専業であったとしても前途のように荷物や小貨物の輸送に貨物列車が運転されていた可能性もあります。よって現在は廃止されて使われていない側線やホームの跡が残っている、そんな感じが地方鉄道の少し寂れたような演出ができるでしょう。
また起点駅周辺は上記の歴史的経緯から終点駅と比較すると街の規模はそれほど大きくないというのが基本となります。市街地から離れたところ、または辛うじて市街地の端を掠めるような立地でそれを何とかするために地方鉄道を敷設するのですから、このような設定が自然といえます。駅建設後に利用客を当て込んだ雑貨店や駅前旅館が進出したりして小規模な街が生まれ、時が流れて現在に至るとこの幹線の駅周辺が新市街として従来からの旧市街をしのぐ規模の町に発展する事例もありますが、それはそれぞれの架空鉄道の方向性次第です。
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起点を出て市街地へと向かいますが、基本的にこういった鉄道は小規模になりがちです。途中駅も数駅で起点が市街地から離れていると集落が少ない場合が多く、起点から次の駅までの距離が離れていたりします。こうした事例では後の高度経済成長の頃に広大な土地を利用して学校が建てられて、そこに隣接す形で一面一線の小さな駅が新設される場合もあります。この時“学”が付く駅名にして、後に語呂合わせの学問成就の入場券が発売されたりしますが、新設当時はそんな事は考えもしないでしょう。
起点駅と町の中心部は鉄道としての規模からすると、路線の距離はさほど長くないでしょう。そしてこうした路線はそのほとんどが単線で敷設されています。そのような状態で客の移動が多く列車が高頻度で運転されているのであれば、途中に交換設備を持った駅が必要になります。短い区間でも片道10分だと両終端駅での折り返しの余裕を考えると30分ヘッドが限界でしょう。日中なら何とかやっていける本数だと思いますが、朝夕のラッシュ時にこの頻度での運転は少なすぎます。また接続する路線のダイヤが必ずしもパターン化されているとは限らず、列車によっては列車が到着する直前に発車するような構成となってしまい、客を30分近く待たせてしまう結果となってしまう可能性もあります。途中に交換設備を持つ駅を設置しても、不規則に運転される接続崎の列車の時刻にあわせられるとは限りませんが、少なくとも次の列車を待つ最大時間は多少なりとも短くする事ができます。大体にっちゅう15〜20分ヘッドで、ラッシュ時には10〜15分ヘッド辺りが中規模都市が理想でしょう。また上手い具合に交換駅を設置するような場所に集落がないというのもありえます。こんな時には駅ではなく信号所を置いて、客扱いを行わずに列車交換するという手もあります。
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市街地に近づくにつれて街らしく建造物も増えてきて賑やかになっていきます。市街地に入るにつれ駅間距離は短くなっていきます。市街地の中心地は街で一番発展した繁華街などの商業地か、市役所などを中心地とした官庁街です。例外も多くありますが大抵の場合はこの二つの街は隣接する事が多く、地方の基幹となる都市では特にそうなるようです。若干離れているのなら、駅として“市役所前”や“県庁前”という駅を設置した上で、繁華街の最寄駅を別個に設定すると短い路線でバリエーションのある駅が設定できて良いでしょう。
この繁華街や官庁街の駅が地方鉄道の営業上の中心駅になるだろうというのは容易に想像できます。多くの場合はこれらの駅が終着駅になるでしょう。しかし中心地の繁華街であるために満足な鉄道用地が確保できないという可能性もあります。こうした時は若干路線を延ばして、街の反対側まで突き抜けてそこに用地を確保して検車区や本社施設を置く事もあります。またバス事業を兼業しているとバスの施設も併設したりします。
貨物営業時代の名残の機回し線や貨物ホームがこちらにも残っていたりして、現在では保線車両の設備として現存しているとするのもありだと思います。

地方都市から郊外の近隣市町村へ向う路線の考察
この鉄道の形態は前途の街と幹線を繋ぐ路線よりも路線規模は大きくなります。基本的に都道府県庁所在地や地方の中核都市から郊外へと向う路線となり、沿線都市の規模は起点となる街が一番大きくなります。この点では大手私鉄路線を小さくまとめたようなものになるでしょう。起点駅は大きく分けて都市の中心地を起点とするものと、他社線の駅を起点とするものの二通りがあります。いずれにしても順序が逆になるだけで、両方寄った上で郊外へと進んでいく形態を主軸として展開するのがよいでしょう。両者とも郊外から鉄道に乗って街にやってくる需要としては上位に入るものであり、どちらの客も定期客として取り込むべきだからです。ただ途中でJR線などと接続する場合は中心となる駅ではなく近隣の駅での接続で地方都市としては外周部辺りに位置します。北陸鉄道の西金沢がこれに該当します。運用上は途中で分かれる路線でJR線に接続する熊本電鉄もありますが、余談ながら線籍としては熊本市中心部へ行く方が支線扱いとなっています。

中心地に起点をおく場合、大手私鉄と同様にターミナルとして系列の商業施設を併設していたり、過去に併設していた堂々とした駅ビルに駅が入るような形が理想的なものだと思います。鉄道施設は地平駅や高架駅などがありますが、長野電鉄の長野駅や北陸鉄道の北鉄金沢などの地下駅も存在します。ホームの規模は色々ありますが、その多くはその鉄道の顔となる駅としては手狭な感じがするイメージがあります。島式ホームの一面二線が主流でラッシュ時には二線とも使って利用客を乗降させて、昼間や夜間には一線だけを使ってもう一線はラッシュ運用を終えた編成が留置されて、しばし体を休めていたりします。中には一面一線で列車を捌くかなり厳しい運用を迫られる起点駅もありますが、こういった事例では隣の駅やそれほど離れていない駅で運用上の拠点を設けて、そこで頻繁な列車交換や乗務員の交代を行い起点駅での作業を極力軽減させる処置を採っています。例としては熊本電鉄の藤崎宮駅と北熊本駅や島原鉄道の諫早駅と本諫早駅などがあります。かつての豊橋鉄道渥美線は起点となる新豊橋駅は一面一線で列車交換できる駅が二つ先と運用的にはやや苦しい駅でしたが、2008年一面二線化されて、ラッシュ時や日中は常にどちらかの線に列車が停車しているという余裕のある運用ができるようになりました。
地方都市の規模はそれほど大きくありません。JR線でいうと地方都市の中核駅から2.3駅、下手をすれば次の駅はもう周りが開けた無人駅の場合もあり、その都市内で完結する列車が設定されている例は稀です。地方私鉄の場合はもっと駅間距離が短いので起点駅からしばらくは街中の風景の中を走ります。とはいっても繁華街以外はそれほど終日の乗降客に恵まれているわけでもなく、朝夕を除けば閑散として駅も多く存在します。古ぼけた雑居ビルや雑居ビル、近年建て替えられたと思しき小奇麗なマンションに囲まれた一面一線の無人駅がひっそりと佇んでいる光景もよく見かけます。駅設備も駅舎の無い一本のホームに待合室かベンチに申し訳程度の屋根が掛かっている簡素なものだったりします。廻りにコンビニでもあれば良い方で、そのコンビニですら駅の客を相手にするというよりは近くを走る大通りを通行する人々をメインターゲットとしているような店構えだったりします。交換駅ですが高松琴平電鉄志度線の瓦町寄りの駅や豊橋鉄道の小池駅などがこのイメージに該当します。地方都市内に乗降客が多い駅を設定するとすれば周辺に集客能力のある設備を置くのが一番です。マンションや住宅地は一見集客能力があるように見えます。しかしこれらの住人が郊外へと志向する需要があればこの考えは成立します。しかし地方都市の場合は都心の住民が都市から郊外への移動を行う時に鉄道はほとんど使いません。なぜなら郊外の店舗や設備には駐車場が完備されているものがほとんどだからです。郊外から都心部へなら渋滞や高い駐車料金を嫌って鉄道を利用する需要はあるでしょう。しかし都心から郊外へは渋滞こそ存在しても駐車場の不安は少ないのが実情です。
では何が良いでしょうか。前途の幹線〜市街地の項目で語った繁華街と官公庁も集客力のある施設です。ただ繁華街は一つの都市に複数あるとは限りません。官庁街はJRなどの中心駅よりやや離れた場所に設置されていることが多く、都市内の途中駅としては悪くないでしょう。まず考えられるのが学校です。学生で車を利用するのは大学生の一部で、高校生がスクーターを利用するにしても学校で禁止しているところも多く、高校以下では自転車くらいが競争相手になるでしょう。実際地方私鉄では通学定期客が一番の顧客だというところも数多く存在します。ただ通学客は時間帯が偏っており、駅員は朝夕のみ配置される駅もあります。

<続く>