有料特急とその派生種別

 大手私鉄において有料特急を運転しているのは、東武、西武、京成、小田急、名鉄、近鉄、南海となっています。運用開始当初は基本的に観光・行楽を目的に設定されました。日光や成田山、伊勢神宮、高野山など寺社仏閣への足としてのものや、鬼怒川温泉や箱根、湯の山温泉など温泉へのアクセス、秩父や伊勢志摩、江ノ島、知多・内海などの海や山など沿線観光地への一クラス上の輸送手段として設定されています。こうした列車は運賃とは別の特別料金を徴収するためにクロスシートや転換クロスシート、そしてリクライニング機能を持たせた転換クロスシートを配置して、追加料金分の満足感を持たせています。もっとも特別料金というものは豪華なためだけでなく速達性や座席確保の意味合いもありますが、少なくとも観光目的の定期有料特急列車はごく初期段階を除いて基本的に転換クロスシート以上の座席をもっています。ただ戦後間もない時期にはそういった事を言ってられない事もあって、例えば小田急では特急専用車両を運行開始に間に合わせる事ができず、ロングシートの背刷り部分に白い布を掛けて、一般車との差別化を図っていました。
 観光・行楽特急以外に都市間連絡列車も有料特急の重要なポジションとなっています。東武の「りょうもう」はビジネス特急とも呼ばれ、東京と群馬の各都市を結び、西武は新宿と川越を、名鉄は名古屋と岐阜や豊橋、犬山など愛知県各都市を、近鉄は大阪と京都、奈良、名古屋を、南海本線は大阪と和歌山をそれぞれ結んでいます。また前述の観光特急も途中駅でビジネス客や所用で都市間を移動する乗客の需要を見込んでいて、日光鬼怒川方面の東武特急は栃木各都市を、西武は新宿池袋から所沢や飯能を、京成は旧スカイライナーのルートを走るシティライナーが東京と千葉西部各都市を、南海高野線は大阪と大阪南東部をルート上に持って、途中乗車の客を拾います。
 近年登場した有料列車として空港連絡特急が挙げられます。ただ大手私鉄でこうした列車を運転しているのは京成、名鉄、南海の三社のみとなっていて、このうち京成と名鉄は厳密に言うと「特急」ではなくそれぞれ「スカイライナー」と「μ(ミュー)スカイ」として他の種別とは別格になっており、特に京成では特別料金不要の「特急」が成田空港に乗り入れています。また名鉄は運用開始当初「快速特急」の「μスカイ」として設定されていましたが、後に「μスカイ」という列車愛称兼列車種別というものになっています。これは名鉄から「μスカイ」以外の全車特別車の列車が消滅した関係で、一部特別車との明確な区別が必要と判断したものと思われ、中部国際空港発ではない2000系使用の列車や中部国際空港発着ながら停車駅が「特急」と同じ2000系使用の列車に対しても「μスカイ」という名称をつけています。空港連絡特急の特徴として基本的に従来型の特急よりも停車駅が少なく都心部と空港を一直線で結ぶというものが挙げられます。これは空港連絡という第一目的があるからで、「スカイライナー」は上野と日暮里に停車した後は成田空港までノンストップで運転され、「μスカイ」は岐阜と犬山から名古屋までは基本的に「特急」と同等(犬山線の柏森を除く)の停車駅ですが、名古屋市内の主要駅の一番空港寄りである神宮前からは中部国際空港までノンストップで運転されます。名鉄の場合は空港連絡のフラッグシップトレインである「μスカイ」の他に一般車(自由席車)と特別車を併結した「特急」が運転されていて、神宮前と中部国際空港間の常滑線内主要駅に停車して空港連絡と常滑線内の旅客需要に応えていますが、やや性格が違うとはいえ毎時4本の有料特急列車が運転されているのは京成や何階には無い特徴といえます。南海の「ラピート」も設定当初は速達列車の「ラピートα」が難波〜関西空港間をノンストップで結んでいました。ただ利用客の低迷から「ラピート」のノンストップ運転は中止されて、JR環状線との連絡駅である新今宮停車を皮切りに現在では「ラピートα」が新今宮、天下茶屋、泉佐野、りんくうタウンと停車するようになり、βは更に堺と岸和田が追加されています。ちなみに設定当初の「ラピートβ」の停車駅は現在のものから天下茶屋とりんくうタウンを除いたものとなっています。

有料特急の始発駅の次停車駅
事業社名 路線名・愛称名 同一市内次停車駅 市外次停車駅 備 考
東武鉄道 スペーシア とうきょうスカイツリー 春日部 ※1
りょうもう とうきょうスカイツリー 東武動物公園  
西武鉄道 新宿線 高田馬場 東村山  
池袋線 −−− 所沢  
京成電鉄 スカイライナー 日暮里 空港第2ビル  
シティライナー 日暮里 京成船橋 ※2
Mライナー・Eライナー 日暮里 八千代台 ※2※3
小田急電鉄 スーパーはこね −−− 小田原  
はこね −−− 町田  
さがみ等 −−− 新百合ヶ丘 ※4
名古屋鉄道 本線豊橋方面 金山 知立 ※5
本線岐阜方面 −−− 国府宮 ※5
犬山線 −−− 岩倉 ※5
津島線 −−− 須ヶ口 ※5
常滑線 金山 太田川 ※5
μスカイ空港方面 金山 中部国際空港 ※5※6※7
近畿日本鉄道 大阪線甲 大阪上本町 津・伊勢市 ※8
大阪線乙 鶴橋 大和八木  
奈良線 大阪上本町 生駒  
京都線 近鉄丹波橋 大和西大寺  
名古屋線甲 −−− ※8
名古屋線乙 −−− 桑名  
南大阪線 −−− 尺土  
南海電気鉄道 ラピートα 新今宮 泉佐野 ※9
ラピートβ 新今宮 ※9
サザン 新今宮 ※9
こうや・りんかん 新今宮 堺東 ※9

注1.2013年夏現在

※1.東武全般に於いて、同一市内では北千住にも停車
※2.シティライナーとモーニングライナー、イブニングライナーは同一市内では青砥にも停車
※3、MライナーとEライナーは、それぞれモーニングライナーとイブニングライナーの略。
※4.さがみの他、あさぎり・えのしま・ホームタウンなど。
※5.名鉄は中間駅である名鉄名古屋駅を基準に掲載。
※6.本線豊橋方面と常滑線、μスカイ空港方面は同一市内では神宮前にも停車。
※7.犬山・岐阜方面は特急と同じ停車駅。
※8.津は名阪特急、伊勢市は阪伊特急。
※9.南海全般に於いて、同一市内では天下茶屋にも停車。

 有料特急は、列車に乗るときどのくらいの時間を乗車すれば別料金を払っても良いと思うでしょうか。東武のビジネス特急である「りょうもう」は浅草から東武動物公園に35分弱掛かり、館林に約1時間で到着となっています。西武では「小江戸」は新宿から東村山まで約25分、所沢に約30分、狭山市に約40分弱、本川越に約50分、池袋線の「ちちぶ」系統は池袋から所沢まで約25分、入間市まで約30分強、飯能へは40分強となっています。小田急では新宿から町田が約30分、本厚木が約40分、小田原が1時間20分くらいとなっています。
 近鉄は大阪上本町から大阪線方面の乙特急で大和八木まで約30分、名張が約55分、奈良線が生駒まで約20分弱、名古屋線が名古屋から桑名まで約15分、四日市まで約30分弱、南大阪線が大阪阿部野橋から尺土まで約30分弱、高田市が約30分程度、柏原神宮前までが約35分となっていて、南海が南海本線の「サザン」が難波から堺まで約10分、岸和田までが25分弱、泉佐野が約30分、高野線は「こうや」や「りんかん」が堺東まで約10分強、金剛まで約20分強、河内長野まで約30分弱、橋本まで約45分となっています。
 このように都市間輸送をメインとした有料特急だと始発駅から次の下車が主体となる駅への所要時間は大体30分あたりとなっています。おおよそこれくらいが料金を上乗せして乗車しても良いと思われる時間なのでしょう。

有料特急と一般列車の次主要駅到着時間差
事業社名 路線名・愛称名 市外次停車駅 特急所要時間 一般所要時間 備 考
東武鉄道 スペーシア 春日部 約35分 約45分  
りょうもう 東武動物公園 約35分 約50分  
西武鉄道 新宿線 東村山 約25分 約30分  
池袋線 所沢 約20分 約25分  
京成電鉄 スカイライナー 空港第2ビル 約40分 約55分  
シティライナー 京成船橋 約30分 約30分  
Mライナー・Eライナー 八千代台 約40分 約40分  
小田急電鉄 スーパーはこね 小田原 約70分 約85分  
はこね 町田 約30分 約30分  
さがみ等 新百合ヶ丘 約20分 約25分  
名古屋鉄道 本線豊橋方面 知立 約20分 約30分 ※1
本線岐阜方面 国府宮 約10分 約15分  
犬山線 岩倉 約10分 約15分  
津島線 須ヶ口 約10分 約10分  
常滑線 太田川 約15分 約20分  
μスカイ空港方面 中部国際空港 約30分 約40分  
近畿日本鉄道 大阪線甲 津・伊勢市 約80・90分 約130・130分  
大阪線乙 大和八木 約30分 約30分  
奈良線 生駒 約20分 約20分  
京都線 大和西大寺 約30分 約45分  
名古屋線甲 約45分 約60分  
名古屋線乙 桑名 約15分 約20分  
南大阪線 尺土 約30分 約30分  
南海電気鉄道 ラピートα 泉佐野 約25分 約35分  
ラピートβ 岸和田 約20分 約25分  
サザン 岸和田 約20分 約25分  
こうや・りんかん 金剛 約20分 約25分  

注1.2013年夏現在。
注2.基本的に全車一般車の際優等列車の時間を掲載。

※1.名鉄は基本的に「特急」はごく一部を除いて特別車連結、また「快速急行」は一部時間帯の運転なので、比較の最優等列車は「急行」とした。

 一般の料金不要優等列車との比較をしてみました。同じ様に見えても列車ごとに所要時間の差異はあるので、5分程度の単位にして掲載したため、表の上では有料列車と一般優等列車のとの所要時間差の無いものもありますが、こういった場合は有料列車の方が数分程度早く運転されています。まあ30分程度の運転時間ではそれほど大きな時間差が生まれるとも思えないので仕方の無い事でしょう。
 有料列車の料金を徴収する理由として速達サービスのほかに着席保証も存在します。特に朝夕のラッシュ時には始発駅の前列で待たないと着席ができない場合がほとんどであり、大多数の人は始発駅でも席を確保するのは容易ではないという事です。つまり座席指定方式で座席を確保すればそれだけで十分なサービスになる事を意味します。そしてこれらの列車は特急用車両を使用するので、通勤用車両とは数段上質な座席で移動できることになります。これなら日中より所要時間が遅いラッシュ時間帯でもそれほどのサービス低下にはならないでしょう。そしてまた比較的座席の確保が容易なディタイムに於いても、特急用車両による座席指定は魅力的であり、ラッシュ時ほどの乗車率は無いものの一定の需要が存在します。
 また多くの大手私鉄有料特急はJRの特急と比較するとかなり短い区間を走ります。私鉄特急で最長距離を走る近鉄の京都と伊勢方面を結ぶ京伊特急でも運行距離200キロ弱、所要時間2時間40分程度となっています。そして西武新宿線「小江戸」の新宿〜川越や名鉄の豊橋〜岐阜、近鉄特急の京都〜奈良など、国鉄/JRではその区間を狙った特急列車を設定していないような距離でもJRの特急と遜色ないような有料特急を設定して運転をしています。西武新宿線特急「小江戸」の場合、新宿〜川越間で約45分ですが、同線の急行は約55分、JR埼京・川越線の快速は約55分、東武東上線の急行は池袋始発ながら川越まで30分から35分となっていて、JRに対しては時間的に優位に立ち、東部東上線に対しては新宿起点とすると、互角かやや優位となっています。ただ「小江戸」の運転頻度は一時間に1本で他事業者の速達列車との対抗はそれほどは考えていないものと考えます。名鉄は快速特急で豊橋〜名古屋間は49分、JR特別快速は51分とほぼ互角ながら、名古屋〜岐阜間は名鉄は特急が約29分、μスカイでも27分ですが、JR快速は約18分、普通ですら約26分とJRの方が名鉄よりも圧倒的に優位に立っています。実際名鉄の乗車率は芳しくないようで、ディタイムの岐阜〜名古屋間のμスカイの設定を廃止し、従来は通過していた笠松駅と新木曽川駅に特急を停車させて、豊川急行の岐阜〜新一宮間の運転を廃止しています。運転頻度は双方とも基本的に毎時4本でこちらは同等といえますが、名鉄は豊橋駅の本数制限があるのでディタイムはともかく、ラッシュ時は不利になっています。近鉄は多くの路線でJRに優位に立ち、名古屋〜鳥羽間では近鉄が特急毎時2本で所要時間が約95分、JRが快速「みえ」が毎時1本で約110分となり、京都〜奈良間では近鉄が特急で約35分、JRがみやこ路快速で45分で双方とも直通は毎時2本となっていますが、近鉄の場合は奈良に程近い大和西大寺に停車する橿原神宮前行きの特急も毎時1〜2本あるので本数もやや優位な時間帯もあります。
 これらのようにJRを利用している人からしてみれば、こんなに短い距離で有料特急がと思うような距離・時間でも運転されて、よほどの短区間でもない限り不自然とまではいえないと思います。ただ15分ごとに運転されている名鉄名古屋本線系の特急は有料の特別席のほかに料金不要の一般車も連結しており特別車両はJRでいうところのグリーン車的な存在で、厳密な意味での有料特急とはいえない部分もあります。この運転形態は南海本線の特急“サザン”にもみられ、こちらは南海特急“サザン”が難波〜和歌山市間を毎時2本で約55分、JRが紀州路快速で天王寺〜和歌山間を毎時4本で約75分と、本数はJRが優位に所要時間は南海が優位に立っています。こうした特別車と一般車が連結した運行形態は名鉄と南海だけで他には見られませんが、足回り共通で車体を差別化した車両を作ってみるのも面白いかもしれません。名鉄は現在固定編成で特別車と一般車を分割して運用するのはできませんが、南海はそれぞれ独立した編成なので、それぞれの制御機器が共通であるという縛りはありますが、運用上ある程度の変化は付けることはできます。ただ名鉄もVVVF制御の2200系列では特別車+一般車の6両基本編成に、ラッシュ時の増結として3100系や3150系を連結するので、それなりに変化を付けることはできます。
 

<ここから>
有料特急の愛称について

 有料特急の多くには車両愛称や列車愛称が付いています。この二つは似ているようで若干違います。字まったく違うのではなく若干違うとしたのは、車両愛称と列車愛称が同じ場合もあるからです。
 まず車両愛称というのはその形式自体に付けられた名前で、どのような列車や運用に就いた場合でも変わらない愛称です。例としては東武の“DRC”や西武の“レッドアロー”、小田急の“ロマンスカー”、名鉄の“パノラマカー”が当て嵌まり、これらの列車は例えば西武レッドアローは特急「ちちぶ」や「むさし」「小江戸」に充当されますが、列車名に“レッドアロー”の名はつきませんし小田急も列車名に“ロマンスカー”はつきません。列車愛称はそれぞれの列車を区別するために付けられるもので、前述の東武では「きぬ」や「けごん」、背小田急では「はこね」や「さがみ」「えのしま」、南海では「サザン」や「こうや」「りんかん」が当て嵌まります。小田急の“EXE”が「はこね」に充当されたり、「えのしま」に充当されたりしますし、前述の通り西武の“レッドアロー”は同一形式で「ちちぶ」や「むさし」「小江戸」に充当されます。
 こうした愛称というのは何故付けられるのでしょうか。車両愛称はその事業者の看板列車として利用客に親しみを持って接してもらおうと考えて付けられたもので、鉄道に特別目を向けない人にとって単なる数字の羅列である形式番号よりも、判りやすい(出来れば格好の良い)名前があった方が特急列車に興味を持ってくるかもしれません。特に小田急の“ロマンスカー”や名鉄の“パノラマカー”、近鉄の“ビスタカー”は鉄道ファンではない多くの人にもその名を知られている代表例といえるでしょう。そして列車愛称は利用者が特急列車に親しみを持ってもらうのと同時に各列車の区別がつきやすいように名付けられるもので、東武の「きぬ」は鬼怒川温泉方面へ、「けごん」は日光方面への行先の違う特急列車を愛称で区別しています。この他日光線系統の「きりふり」と鬼怒川温泉系統の「ゆのさと」が存在しますが、この2列車は元々有料の「急行」として運転されていたのを「特急」化したもので、停車駅の区別で別愛称にしたものの亜種といえます。この他JRに乗り入れる「特急」で日光線系統は東武車を使用したものは「スペーシアけごん」「スペーシアきぬ」、JR車使用のものを「日光」「きぬがわ」と命名しています。これは東武車とJR車では室内設備が違うのと、事業者ごとに明確に区別をしたいという思惑で命名されたのでしょう。小田急では「スーパーはこね」「はこね」「さがみ」は小田原線内においての停車駅の差異によって区別され、「えのしま」は相模大野で小田原線から分岐する江ノ島線の片瀬江ノ島まで行く方向によって区別された愛称です。また東京寄りで新宿を起点終点とせずに東京メトロ千代田線に乗り入れる特急も存在しますが、これらはまったく別の名称ではなく「はこね」と「さがみ」の前に“メトロ”とつけて区別をしてます。別愛称としなかったのは小田急線内では列車の性格は変わらず、「はこね」と「さがみ」が地下鉄線に乗り入れるという形なのでこうした愛称になったのでしょう。こうした列車愛称は利用客の愛着や区別を付けるといったことのほかにも時間帯ごとの列車を区物するという意味合いもあります。これは有料特急列車として指定席券や特急券を発売する場「、○○時○○分の特急」と言って予約をするよりも「○○時の○○1号」と言って予約する方が利用客にとっても発行する窓口の駅職員としても間違いを減らしやすい効果があり、こうした理由でかつての国鉄では指定席や寝台車が連結されている「普通」には「山陰」や「はやたま」といった列車愛称が付けられていました。
 車両愛称と列車愛称は別と前述しましたが、同一でもある事業者も存在します。こうした列車は空港連絡特急に多くみられ、京成の「スカイライナー」、名鉄の「μスカイ」、南海の「ラピート」が当て嵌まります。この三つの空港連絡特急は空港開業に合わせて設定されたもので車両も列車に合わせて特化したものなので、車両愛称と列車愛称を事業者が意図的に同一視して走らせているものと思われます。ただ名鉄は運用開始当初は「快速特急 μスカイ」として設定されていましたが、近年は「μスカイ」が全車特別車の列車種別として快速特急から独立したので、空港に行かなかったり、特急並みの停車駅の列車でも2000系を使った全車特別車の列車ならば「μスカイ」として運転されるようになり、必ずしも中部国際空港駅に発着する最速列車とは限らなくなっています。
 東武“スペーシア”は最近になって“スペーシア”を冠した列車愛称を設定しましたが、これは前述の通りJR線に乗り入れる列車につけたもので、JRに乗り入れる東武車両と言うのを強調するために付けられたと考えられます。このため浅草発着の東武線内のみの特急の列車愛称には“スペーシア”と言う愛称は付けられていません。
 指定券を購入する際に愛称がついていると都合が良いとは書きましたが、列車愛称をつけない事業者も存在します。それは名鉄と近鉄で時刻表や券に愛称の類はまったく記されていません。有料特急が多くの路線で複雑に運転されている近鉄特急に列車愛称が存在しないのは意外に思えますが、これは近鉄では乗り継ぎによる複数の特急に乗車する例が多いのが理由の一つと考えられ、乗車日時間と発駅、経路、着駅がわかれば後は愛称がなくても問題はないという事なのかもしれません。ただしアーバンライナーや伊勢志摩ライナー、しまかぜ、には特別急行券にその車両を表わしたマークが描かれています。また名鉄の場合はμチケットと言われる座席指定券は他社と同じ1ヶ月前から予約できますが、近距離であるせいか実際に予約するのは乗車日かそれに近い日で、特に乗車時間直前が良く売れるので、「次の○○行き」と言う程度で購入できるからかもしれません。
 そして近鉄は前述のように列車愛称は設定されていませんが、車両愛称は驚くほどに多彩で、2013年現役の特急車で愛称がついていないのは南大阪線の一部形式だけで、新スナックカー、サニーカー、ビスタカー、Ace、アーバンライナー、伊勢志摩ライナー、さくらライナー、しまかぜと車両愛称は実に多彩となっていて、列車愛称の無い近鉄としては実に興味深いものとなっています。

 有料特急を設定した場合、車両愛称か列車愛称のどちらかは付けた方が良いと思いますし、その方が面白いでしょう。列車名称に関して多くの場合は目的地である土地に関した名称が大手私鉄の有料特急ではほぼ全てだと言えます。南海のサザンがそうではないようですが、名前の由来は南海の“南”からとか難波周辺の繁華街である“ミナミ”からとか言われています。また空港連絡特急である京成の“スカイライナー”や名鉄の“μスカイ”も広い意味では目的地に由来した名称であると言えるでしょう。架空鉄道を設定した場合、その終点や有料特急を運転させるに足る理由から列車名称を決めるのが一番現実に沿ったものになるでしょう。しかしこうした現実世界の傾向にとらわれる必要も無く、ちゃんとした由来を設けることさえできれば変わった列車名称をつけるのも良いでしょう。
 車両愛称としては車両の特徴やスピード感を重視したものが命名されています。前面展望が特徴の名鉄パノラマカー、ロマンスシートが売りの小田急ロマンスカー、眺望車と言う意味の近鉄ビスタカーなどは看板特急の特徴を愛称にしたものです。近鉄のエースカーは見た目の特徴ではないですが、汎用特急車として自在に編成を組める切り札の形式としてトランプのエースから来たものと言われています。後に登場した22000系“ACE”は“先進的”“快適”“簡便”の英語表記の頭文字と先代エースを掛け合わせた車両愛称となっています。西武レッドアローは矢というスピード感のあるイメージを持つものと、車体に巻かれた赤い帯を合わせた愛称です。東武“スペーシア”と南海“ラピート”は公募で愛称を選んだもので“スペーシア”は快適性を“ラピート”はスピード感を表わしているとされています。スピード感や高級感、または特別な特徴を有料特急車に備えたとしたら、それを○○カーとして名付けるのも良いでしょう。他にも末尾はカーだけではなくライナーやエクスプレス、トレインをつけるのも新鮮味を出す点ではよいと思います。

続く